January 19, 2007

On My Load 第21話


日も暮れて、夕焼け雲が真っ赤に燃え盛る頃、

僕の携帯の着信メロが奏でだした。

『名無しの彼女だ!!』

僕は一呼吸置いてから、ゆっくりと、

アンテナを伸ばし耳に近づけた。

もしもしヒートですが・・・

彼女からの言葉はこうだった。

今夜はどうしても都合がつかないの、ごめんなさい。

今どこにいるの!?と

名無しの彼女が言うので、銀座の近くだよ。

と僕が言うと、時計は午後五時半を回った頃でしょ・・・。

有楽町のビックカメラの街頭ビジョンに

午後六時までに行って。さあ、早く。

そういうと彼女の携帯は切れた。

僕は足早に銀座から有楽町まで夢中になって駆け出していた。


いいしれぬ、そわそわした焦燥感に駆られながら、

いらぬ妄想を振り切るように

両手を左右に大きくスライドさせながら、

目的の場所に五分前に着いた。刻々と六時に近づく。

いよいよ三十秒前。二十秒前。十秒前。

9・8・7・6・5・4・3・2・1

街頭ビジョンの画面が変わった。会えないからこそ

忘れたことは一秒もないよ。

少し早いけどバレンタインの代わりに『サランヘヨ』

名無しの彼女より。

何と街頭ビジョンでの告白メッセージだった。

ほんの一瞬の出来事だったが、僕は永遠の一秒に感じた。

求めるだけが愛じゃない。

僕は、悟ったように、携帯をポケットからだし、

マキ今からそっちに行くから。

準備をしといておくれ。

用はすんだから。改めて彼女を信じる事にした。


22:22:01 | t-komaro | | DISALLOWED (TrackBack) TrackBacks