August 17, 2007

On My Load 第60話


ヒートは正直なところ悩んでいた。

名無しを日の当たる場所へ連れて行くことには

異論は無いどころか、

君のためならどんな協力でも惜しまない覚悟はある。

が、しかし名無しが日の当たる場所へ

出ることすなわち、雲の上へ行くこと。

その世界では、次々と勝ち組の名のもとに

人生が回ろうとしているのに、

果たして一時期の感情だけで

名無しの足を引っ張るくらいなら、

このプロジェクトが成功したら、身を引いて、

御曹司に名無しを委ねたほうが、

結果として、名無しには幸福になるのではと、

胸の内とは反対に理性回路の左脳が、

現実世界の方程式の解に無理やり自分をあてはめて、

考えている自分が嫌になる。

僕は名無しを抱く事は出来ない。

もしそれを実行してしまうと、

今までの名無しのため・・・いや、

自分が好きな人を幸せにするため。

初めて自分が人の為に動いている

押さえられない衝動・・・感情・・・

それとも欲望・・・。

僕はもしかしたら大きな勘違いを

しているのかもしれないことに、気ずかずにいた。


19:09:35 | t-komaro | | DISALLOWED (TrackBack) TrackBacks

August 15, 2007

On My Load 第59話


やっぱ無理があるんじゃぁないの・・・と

ボイトレの先生が口火を切った。

確かに素質というか、原石は認めるけど、

いかんせん日にちがないんだよねー。。

素人の子が付け焼刃の練習だけで、

そうそう旨くなるはずがないじゃないですか。

アイドル少女なら、まだ許せるけど、

名無しはそういう立場じゃあないし。

分かって無理を承知で引き受けたんです。

僕も名無しも日の当たる場所へ行く為なら、

どんな茨の道でも、駆け抜けて行く

覚悟は誰よりもあります。

名無しのテクニックがない分、

僕が素の部分でも十分勝負できるように、

名無し共々僕の人生賭けてでも

成功させなくちゃいけないんです。

ボイトレの先生が、分かった。

君達の信念が十分伝わった。よし。

私も精一杯努力して、歌えるようにしてやる。

その代わり、ヒート君にもそれなりの

代償は支払ってもらうよ。

ヒートがその代償とは・・・。

名無しと結婚すること。

そんじゃあなくちゃあ、名無しさんが、

本当の君を知ることができないでしょう。

約束よ。そう言い放つと、

ドアを開けて、部屋から去って行った。


20:18:19 | t-komaro | | DISALLOWED (TrackBack) TrackBacks

August 14, 2007

On My Load 第58話


さあ、みんなお疲れ様。

やっと最終テイクの“EXIT”を

聴いてもらったわけだが、どんだろうか。

ボーカルのテイクとしては、やや固さがあるかな・・・

とドラムの石井隆が切り出すと、

ベースの伊藤要もうまくカバーさせようとして、

リバーブ等を少しかけすぎじゃないのかな。

もう少しタイトでも名無しとしては、

そっちのほうが際立つと思いますよ。

いやはや、一番苦労して繕った所をさすがプロ達、

ずばりつっついてくる。

まぁ、最初は、こんなもんだから。

と名無しが落ち込んでいるのを見て、

君が悪いんじゃないんだよ。

全て、僕の技量不足さ。

はじめてにしては、トライしただけスゴイこと

なんだよ。また、それだけ、

難しい事に僕達はチャレンジしているんだ。

もう引き返せない。

進むしかないんだよ。大丈夫。

ここに居るみんなの力を合わせれば、

必ず、OKテイクが録れるから。

と名無しを諭すと、ヒートは、

ボイトレの先生と打ち合わせするため、

スタジオブースからでて、

ヒートの個室に二人は消えていった。


18:54:39 | t-komaro | | DISALLOWED (TrackBack) TrackBacks